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「はっ!!」
夏侯惇が袈裟斬りを放つ。楓が体を横にずらして避けるとそこに曹操の大鎌が横から飛んでくる。それを後方に跳躍しながら跳び越し、距離をとる。そこに夏侯惇が突撃を仕掛ける。
袈裟、斬り上げ、胴・・・・・・様々な場所から斬撃がくるが楓は難無く避け続ける。
「なんだ、魏武の大剣と謳われる夏侯惇はただの猪武者なのか」
「黙れ!」
「あの盲夏侯がこの程度だというならあの2人もたかが知れてるな。なぁ、春蘭」
「その名前で呼ぶな!!」
楓が夏侯惇の真名を呼び、挑発すると攻撃が単調になった。袈裟斬りがかわされたから斬り上げ、それもかわされると横から、というパターンが出来上がりつつあった。
初撃をかわされた曹操はその様子を見ていた。並の実力ではなく、普通に正面から攻撃しても効果がないだろう。そう考えて作戦を練っていた。
「・・・・・・っ!!」
その時、夏侯惇が大振りした袈裟斬りの反動で体勢を崩した。
隙を見せた夏侯惇にとどめをさそうとその首筋に手刀をしようとした。しかし、その顔には焦りが見えず、寧ろ笑っているように見えた。
「くっ・・・・・・!」
顔を上げると一本の矢が飛んできた。夏侯淵の放った矢だった。夏侯惇がわざと隙を見せ、意識を集中させることで死角から夏侯淵が放った矢で仕留めるというものだった。事前に話し合いなどせずこのようなことが出来たのは姉妹であるが故だろうか。避けきれないと判断した楓は手刀をしようとした左手で矢を掴んだ。
「危ない危ない。ホントに殺(や)られるところだったよ」
3人は驚いた。いくら1本とはいえ、あの夏侯淵の矢を掴んだのだ。
「さて、そろそろ手を出そうかな」
そう言い、距離を取って、曹操の近くにいた夏侯惇に向けて駆け出した。
速い・・・・・・いや、疾いと言ったほうがいいだろう。余りにも疾いため、曹操は牽制するために大鎌を投げた。
回転しながら飛んでいくそれを避けながらもスピードを殆ど落とさずに駆け続ける。武器のない曹操にとっては非常に危険な状況であったが、本当の狙いは不意打ちであった。飛んでいった大鎌が戻って来て楓の命を盗ろうとしていた。
「殺った!」
そう誰にも聞こえないような小声で言った。
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