正史→外史

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 「はぁ・・・・・・」 源川楓(ミナガワカエデ)は溜息をついた。彼は聖フランチェスカ学園の生徒である。元女子校であったここの男子として第一期生となるうちの一人だ。 「どうしたの?」 と、彼の後ろにピッタリと付くように歩いている少女が言った。彼女は成宮梨音(ナリミヤリオン)。楓と同級生だが、クラスは別である。楓と梨音は恋仲でもない。この二人には上下関係が存在しているのだ。楓が主、梨音がメイドということになっているのだが、二人はそのようには思っておらず、むしろいいパートナーだと思っている。 「いや、毎日の授業がかったるいなと思ってな」 楓は前を向きながら答える。梨音は呆れた様子であった。 「また?たまには真剣に受けてみればいいじゃない。少しぐらい面白くなるとは思うけど」 「そう簡単に出来れば最初からしてるさ」 楓は梨音に振り向きながら、口を尖らせて言う。そのまましばらく黙って歩き、寮に着いた。 「じゃあ1時間後に何時もの場所でね」 あぁと楓は素っ気なく答え、自分の部屋へと入っていった。  ふぅとベッドに腰を降ろした彼は身に纏っている真っ白い制服を脱ぎ、黒いシャツを着る。シャツを出した引き出しの上にはこの時代には存在しないようなものが置いてある。古ぼけた両刃の剣から硬貨のようなものまで・・・・・・。彼が今までに時間跳躍して手にいれたものだった。 ふと時計を見る。梨音と別れたのは午後5時。時計の長針は4を指している。軽食を摂るために楓はキッチンへと向かう。  長針が7を過ぎた。まだ着替えていなかったズボンも履きかえ、部屋の片隅に置いてあった野球のバットよりも長い黒い革の袋を手に取り、部屋を出ていった。 「何時もの場所」へと向かう彼は走っている。歩いても10分足らずで着くため、走る必要は無い。これは「何時もの場所」で行う前ウォーミングアップである。少々息があがるペースで走っていた彼は5分程で目的の場所に着いてしまった。
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