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目を開ける。そこには360度に広がる荒野と彼らの散らばった荷物があった。地平線の上に遠くで揺らめく建物の陰が見えた。
「無事に着いたようだな」
「うん、そうみたいね」
服についた砂を掃いながら梨音は答えた。荷物を集め、状況の確認をする。身体に異状は無し、失くなったものもない、ここは・・・・・・
「どこ?」
しかし考えたところでGPSのようなものは無ければ地図も無いので、二人はこれからの方針を立てる。
「とりあえずはあそこに行ってみるべきかな?」
と梨音が指差した先にはあの建物の陰があった。しかし、その方向に顔を向けた2人は別のものを見た。
「あれは・・・・・・」
砂煙が立っていた。まだ小さくただの自然現象か、はたまた何者かが引き起こしているのかはまだわからない。それはだんだんと大きくなってきている。何かわからないため、二人は一応身構える。それの正体がはっきりすると緊張を緩めた。馬だった。ただ、問題はそこではない。馬を操る人がいたのだ。青を基調とした服を着ている者が2人、赤を基調とした服を着ている者が1人・・・・・・。
馬が彼らの前に止まり、青い服を着た金髪の人、いや、少女が馬から降り問い掛けた。
「貴方たちは誰かしら?」
楓、梨音はその少女からオーラのようなものを感じた。身分が高いのだろうと感じ、楓は片膝を地面につき、その後ろに梨音が立つ。ここは相手を敬うのが得策だ、との考えだった。
「私は源川楓といいます。こちらは従者の成宮梨音です」
と言うと梨音は頭を下げる。
「そう・・・・・・。私は曹操。こっちが夏侯惇、こっちが夏侯淵よ」
とまず赤い服で黒髪の少女を指してから青い服で青髪の少女を指す。楓と梨音は顔を見合わせる。無理もない。彼らの世界での曹操、夏侯惇、夏侯淵と言えば三国時代の魏の王と猛将――男性だからだ。しかし彼女らはそのように言った。混乱して次の句を出せないでいた。
「どうしたの?」
二人の態度を見て曹操は聞いた。
「いえ・・・・・・、少々驚いているだけです。ご心配ありません」
「どうして?」
楓は正直に言うべきか迷った。未来から来た、未来では曹操は男だと言っても信じてはくれないだろう。なら、このまま話を通したほうがいい。
「貴女のような御方が何故このような場所にいらっしゃるのか不思議に思ったのです」
出まかせだが、それらしい理由を立て、楓は言った。
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