だからその手は離さない

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たまたま降り立った、月見ヶ丘駅。 名古屋から電車で一本。 「あっついねぇ……、」 「そうだなぁ…。」 暑いな、とは言いつつも、スタジオで慣れっこの二人である。 ボーカル稲葉の喉の為に、エアコンを入れないのはいつもの話だからだ。 B'zとして、自己の体調管理は欠かせない。 夜6時だからか、帰宅途中の高校生が多く、そのほぼ大勢が携帯電話を必死に見つめているため自分たちの正体に気づかれることもなく、稲葉と松本は二人で歩くことができるのであった。 しかも、名古屋でライブをする予定もないので、まさかこの二人が愛知に来てる、と知る人はほとんどいない。 そんな二人が駅前をぶらぶらしていると、耳に飛び込んでくる音があった。選挙演説にまぎれているものの……それは紛れもない、エレキギターの高音。 しかも…二人には妙に耳に引っかかるフレーズである。 知らぬ間に二人は互いに顔を見合わせていた。 「…松本さん……、これってもしかして。」 松本は稲葉の返事も聞かず、ずんずんと音のする方へ進んでいく。 ………インストゥメタルにアレンジされたその曲は…まさに自分たちの曲。
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