新しい春―その3

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 拓巳は思った。もし自分がガラス戸の向こうに一緒に行こうと言わず、パチプロの生活を一緒にしようと言えば、あるいはあの日、一緒に新幹線に乗ったかもしれないのじゃないかと。  しかしもはや考えても仕方のないことだった。万が一そうなったとしても、拓巳と一緒のパチンコでは生活していけるかどうかも解らず、相変わらず桜子を不幸の似合う顔にしていたかもしれない。  パチンコをやめ、真面目に働いている自分すら馬鹿馬鹿しく思えた。  今のままの生活は普通で、まともで、誰にも文句の言いようのない生活だ。でも心はどうだろう。拓巳はいつもどこか物足りない気がしていた。  あのスリルに満ちた日々を、自分はまだ忘れてはいなかった。  久しぶりにパチンコ屋に足を踏み入れ、拓巳は嫌というほどそれを感じていた。 (人生なんてゲーム見たいなもの…ゲームの中でギャンブルをやっていてなにが悪い。どうせ行きつくさきは、みんな同じだ…)  拓巳は投げ遣りな気持ちでそう思った。  駅に向かう道を歩きながら、拓巳はもっちゃんの言葉を思い出した。 (…今打てば出るって言っていたな…)  拓巳は駅からきびすを返し、そのまま中野インターナショナルセンターの前まできた。 (今日だけ…これ一回だけだ)  そして拓巳はガラス戸の中に入っていった。                END
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