1ラウンド 憧れ―その1

2/15
前へ
/377ページ
次へ
(平成元年春――)  中野駅に向かうバスの中、拓巳は小さなため息を付いた。  見まいと思っても、どうしても彼女の姿を追ってしまう。  吊り革につかまりながらちらっちらっとその横顔を盗み見ても、彼女は回りの様子を気に留める素振りもなく、ただぼんやりと外の景色を眺めていた。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

551人が本棚に入れています
本棚に追加