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「うぅ……くッ…あぅぅ…」
慈悲深さと悲哀に富んだ表情を湛えた銅像へ跪ずき、少女はその手を眼前で合わし祈っていた。
彼女の瞳からは、外に降る雨よりも激しく涙が溢れている。
彼女は尚も声を上げ、懸命にイエスを仰ぐ。
年齢は15、6程の、その顔にあどけなさを残したままの平凡な少女。
肩までの黒髪に目元を隠す長い前髪、頬にうっすらとにきびを持つ。
その服装から察するに、この界隈に住む女子高校生の一人だろう。
「あぁッ…神様!
私は…罪を……イエス様……ッ!!」
彼女は一層声を上げて、泪をとめどなく流す。
その心には陰が差し込み、絶望と罪悪の淵にいるのは明らかであった。
「―――…可哀想な娘だ」
哀れみを誘うその姿を、一人の男と娘が聖堂内への入口の影から眺めている。
男は初老に差し掛かる顔に肉付きの良い体格で、その身は修道衣に包まれている。
その顔からも感じる優しさは恐らく、この教会に勤める神父であるからだろう。
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