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一方で娘は、泣いている少女と同年代のようだ。彼女も同様の制服を身に付け、心配そうな瞳を向けている。
髪を左右に結んだツインテールで、綺麗な顔立ちのその少女は神父よりも背が高い。
先程から、二人は扉の影からあの少女を見ていた。
彼女の横顔を覗きながら、ツインテールの少女が囁く。
「……神父様、彼女を…私の友人を、どうか助けてあげて下さい。
彼女は魔がさしただけなんです。あんな事をするような子では…」
「…分かっています。彼女も道に迷っただけの子羊であるのは」
神父は一歩進み出て、不思議な笑みをその少女に向ける。
「……貴女と同じく、ね」
神父はゆっくりとした足取りで聖堂へ入ると、泣きじゃくる少女へ静かに近付いていく。
それに気付いた少女は、涙に濡れた顔を上げて神父へ目を向ける。
神父は肩を支え優しく起こすと、奥へと続く通路へ彼女を導き歩いて行った。
―――鐘が鳴る。
教会の壁を複雑に反響した鐘の音が、辺りに悲しく谺する。
雨は徐々に上がりつつあった。
日は間もなく沈み、辺りは暗闇に包まれる。
時が進めば、やがて街の灯も帳も消え深淵が訪れる。
だが、その深淵の闇でさえも、人の心の闇には遠く及ばないのだ。
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