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紅魔館。
紅に朱する魔の潜む館。
誰が紅に染めたのか、
それが何故紅なのか、
館が建てられて幾千年経った今でも、誰もその理由を知らない。
数多の文献や賢者の唱えるそれは、ただの後付け。
形容することが美だと、抽象的であることが雅だと謳われた時代の錆びた遺産に過ぎない。
その館はただそこに在る。
その主が変わろうと、度重なる風雨や、血や剣に晒されようと、
無機物であるが故に、己が存在を揺らぎもせず。
観るもの全てを圧倒するその館は、
しかし、
今は降りしきる雨に霞むばかりだった。
下手くそな画家が手掛けた油絵のように、
紅の色は鈍重さも威厳も無く、
降りしきる雨に全てを流されんと、
ただ刹那に佇むのみである―
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