光太 ―1日目―

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 デザイナーズ・チャイルド、かーー  今の僕にはとてつもなくムカつく単語だ。  20年前に成立した「少子化対策基本法」のおかげで、金持ちは有名スポーツ選手や歌手、天才科学者など、「ハイスペックな人」の冷凍精子や卵子を「買う」ことが出来る。  もちろん半分は親の遺伝子なわけだが、それでも一般人よりずっと有利な人生が、彼らには約束されている。  遺伝子を買った事を公にすることで、DCは更なる人生のチャンスを得る事だって出来る。もちろん彼らの中に妹のような障害者はいない。 本来の趣旨は「子供が欲しいのに出来ない人を、テクノロジーの力で救う」というものだったはずなのに、いつの間にか富裕層を満足させるためのものに変わってしまっていた。資本主義ってある意味すげぇ残酷だ。  この超格差社会をどう思っているのか、妹の飄々とした態度に若干の違和感と苛立ちを覚えながら、やや乱暴な足取りで僕はペンションを後にした。
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