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遊歩道を少し歩くと、僕の泊まっているペンションはすぐに見えなくなった。
そこから先は、なだらかに下って川原へと続いている。
山ン中だというのに結構日差しがキツい。
「あーツマんねーツマんねー」
鬱陶しいくらい鳴き続けるセミの声に負けないくらいの声量で、死ぬほどどうでもいい独り言を言いながら、僕は半ば無意識に川原のほうへ足を向けた。
ペンションから少し離れた所に、白いお洒落な家が見える。
一見して金をかけた事が分かるその家は、親父の話によるとどこかの金持ちのセカンドハウスらしい。
「金持ちの別荘か……けっ!」
その家の窓ガラスに石をぶつけてやりたい衝動と戦いながら、僕は川原へ下りる道を歩いた。
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