亡き君へ

真実

　病院の中は随分と入り組んでいて、たどり着く迄時間がかかった。

手術室の前には幾つかの縦長のソファベンチが有り何人かの人が座っていた。
「あの・・・・」と３０代程の見覚えの有る女性が立ち上がりながら話掛けてきた。大谷さんだと直ぐに気付いた。

彼女は以前に会った時よりも、幾分か老けた様に見えたが、きっと泣き過ぎて目が紅く腫れていたからかもしれない。

握りしめている花柄のハンカチはグッショリと濡れている。

「彼女は、・・・・晴香は無事なんですか？」僕は息が上がりながら上擦った声で尋ねた。

「まだ、容態は解りません。本当に・・・・私が付いていながら何て言ったらいいのか・・・・」鳴咽混じりに涙を流しなら、彼女はハンカチで口を押さえた。

僕は何故彼女が事故に合ったのか知りたかったが、彼女が落ち着くまで何と無く立ち尽くしていた。

彼女は長い間雨に濡れた様で、髪も乱れベージュのパンツは泥だらけになっていた。

「斎藤さんは・・・・」微かに震えた声で、彼女は話始めた。

「斎藤さんと私は遠足の買い物をしていたんです。買い物も大体済ませて、お昼にしようって・・・・」ティッシュを僕は彼女に差し出した。

「すいません。・・・・・・それで、私達街から少し離れた所に行く事になって」