4月の夜

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ダーツは、少し先に同僚と始めていた僕が晴香に得意げにレクチャーしていたが、最近はたまに負ける事が有る。その度に僕は、苦しい言い訳をする事になる。 ボウリングは、彼女のスコアが100を超えた記憶が僕には無い。「女の子にこんな重い物を投げろと言うのは、きっと奴隷時代の名残よ」これが、大体晴香の言い訳。 晴香のマンションに寄る前、夜の閑静な住宅街には不自然な程照明の明るいコンビニに寄り、まだ少し飲み足りない僕はハイネケンとバドワイザーを、晴香は甘そうなチーズケーキとドーナツ、ミルクティーを買った。 「君は飲んでからでも良く甘い物が食べられるね」と関心した僕に、「私の夢はミスタードーナツに暮らす事なの」と真顔で言った。きっと冗談じゃなく本気だろうと僕は思った。 コンビニから歩いてすぐの所に晴香のマンションは有る。タイル貼りの12階建てオートロックで、地下鉄も近い。それでいて家賃は結構安い。  同棲する話は有ったが互いに1Kと、二人で暮らすには狭い上、地下鉄で二つしか離れて居なかったので、いつの間にかその話は消えてしまった。 その気になればいつでも逢えるし、週末には必ずどちらかのマンションに泊まっていた。
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