報せ

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翌朝早くに晴香は朝食を用意してくれていた。 トーストにハムエッグ、トマトスープにグリーンサラダ、湯気のたった美味そうなコーヒーが薄いグリーンのファイヤーキングに注がれていた。 「おはよう。今日はなんだか雨が降りそうなの。昨日の予報では晴れだったのに。大谷先生もう家を出たかしら?傘、忘れてなければ良いんだけど」 そうか、今日は晴香は買い物に行くんだった。  晴香はいつも自分の事より人の事を心配する。忘れ物は無いか?薬はちゃんと飲んだか? 彼女ならきっと良い母親になるだろう。 「ちゃんと家を出る前にニュースなり、予報なり見てるさ」まだ湯気のたつ熱いコーヒーを啜りながら僕は言った。 「そうだと良いんだけど。大谷先生って結構抜けてる所有るから」 晴香は淡いブルーのワンピースの下にタイトジーンズ、髪はアップにまとめていた。腕には僕がプレゼントしたCHANELの白い小振りな時計をはめている。彼女は香水を付けない。 「私、もう出るけど夕方大谷先生と別れたら電話するね。それからチロルで外食でもしましょう」チロルとは僕等が良く行く、イタリア人の主人と上品な日本人の奥さんがやっているパスタの旨い店だ。
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