🚄身勝手な男

🔔発車のベルは鳴り

それは私の恋の終わりを意味しています。

彼は見送りにさえも来てくれなかった。

急ぐ人に押される様にして私も列車に乗りました。

直ぐに席には着けません ドアの窓から消えて行く 駅のホームが見えなくなる最後まで見ていました。

目的駅にたどり着く間に、この事実と向き合わなければなりません。

私は振られたのです

彼に言わせれば 付き合った事実もなかったのかも知れません。

５年間の出来事は私だけが見ていた幻だったのでしょうか

今となっては知る事も出来ません。

出会った時の事が昨日の事の様に浮かんで来ます

今日までの日をたどりながら 彼の事を忘れようと思います。

上京して就職した会社の同期に彼はいました、偶然にも同郷でした。

他に知り合いのないこの街で 同郷の彼の事はちょっぴり心強い存在でありました。

でもそれは私が勝手に思っていただけで 実際は挨拶を交わし社内で話をするだけで 同僚の壁を越える事はありませんでした。

性格にしてもインスピレーションで活発に動く彼に対し 私はキッチリと予定を立てて行動するタイプなので、社内の会話でもさほど 盛り上がる事もありませんでした。

仕事がそれ程 出来る人ではなかったけど 彼はとても人気があり その魅力に引き込まれていた 私もその一人です。

同郷と言う事で 彼も色々と私に気をつかい、天然の私にツッコミを入れたり、仕事の面でもフォローしてくれる事もありましたけど それ以上の関係には進めずにいました。

ある時、社内の有志が飲み会を企画して 私も彼も参加しました。

普段余り感じる事のない雰囲気にテンションは上がり 私はつい飲み過ぎてしまいました。

二次会へ向かうメンバーに飲み過ぎた事を伝え一人で先に帰る事にします。

ふらつく身体を街路樹で支えながら タクシーを待っていると いきなり肩を抱かれ驚くと。

心配そうな顔をした彼がそこにいました。

送ってくれると言います

大丈夫と言う間もなくタクシーを止めて一緒に乗り込みます

正直、少し嬉しいと感じたのは確かです。

その気持ちが帰ると言う彼を引き止めてしまいました。

責任は私にもあったのです