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さっき、ここに来る途中、1つだけ咲いた桜を見つけた。 その花がついた木は決してふさふさの満開ではなく。 きっと、狂い咲き。 今の私には、その1つだけ開いた花が希望にも、絶望にも見えた。 「斉藤…」 「先生…」 カタンと音が鳴って、部室に先生が入ってきた。 「あの…」 私が口を開こうとしたら、先生は私の口に人差し指をあてた。 「目、閉じろ」 ふんわりと優しい声。 目を閉じたら希望と不安が入り混じった感情が、少し明るくなった。 少し先生が動いた。 「もう、いいぞ」 恐る恐る目を開けると、先生は私の目の前に小さなピンキーリングを差し出していた。 「俺との賭けに勝った、ご褒美だ」 信じられないという風に先生を見ると、 先生は綺麗に笑った。 「本当は、ずっと好きだった」 「っ…!!」 自然に流れる涙を、彼はすっとぬぐう。 3年前、新任だった先生が大好きになって告白した。 でも、生徒と教師だからと断られていた。 『もし、お前の卒業式になっても俺が好きだったら…』 その甘い期待に希望を捨てなかった。 「先生…昨日も言いましたが… 好きです」 あったかい、その腕の中に飛び込んだ。 .
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