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今日、一つだけ開いた桜を見つけた。
「あ、先輩。おはようございます!」
「あぁ!
おはよう、孝太郎くん!」
この人は俺にとって支えだった。なのになんで、卒業なんて制度があるんだろう。
「いよいよですね…」
「うん…私ぜったい号泣するよぉ~!!」
「先輩は学校大好きでしたもんね」
「勉強は嫌いだけどね!!」
気付いてましたか?俺、あなたのそのコロコロ変わる表情が好きだったんですよ。
「式おわったら部の方にも来てくださいね?」
「うんっ」
「花束、俺が渡しますから」
「うんっ」
「先輩…」
「ん?」
…好きだと言っても、いいですか?
拳をにぎりしめてそんな気持ちをおさえこんだ。
「先輩のボタン、俺にください」
間違って咲いたあの一つの桜みたいに、この想いはやがて満開にならずに散るんだろう。
ほら、困った顔を一瞬だけど、した。
俺にはわかっている。
先輩は俺を好きにはならない。
「…なにそれー!孝太郎くん、女の子みたい!!」
あ、笑った顔。
いいんだ。今は。
その笑顔だけで、俺の心に春が来た。
まだ、春雪は残る。
だけど、覚悟しててください。
諦めませんから。
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