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結局、私があいつより小さくなる事はなかった。
「くそくそ由香~!!なんでそんなでかいんだよー!!」
「失礼ね!!女の子にくそなんて言わないでよ!!」
目線より少し下の徹に、素直になれない自分が嫌だ。
あれから徹は何㎝のびたんだろう。
今じゃ私とほとんど変わらない。
『卒業前には由香を追い越してやる!!もし…追い越したら……俺と付き合えよ!!』
なんて事を言われたの、まだ覚えてるよ。私の成長なんて止まれば良かったのにね。
『でも…もし追い越せなかったら……お前とつりあわねぇから…諦める』
あの時の万が一がおこっちゃったね。
「くやしー!!!」
叫んでる徹の背中をみながら、気付かれないように溜め息をつく。
私の気持ち、関係ないのね。
でも。
ここで告白なんてしたら、絶対怒るでしょう?
同情かって。誤解されるの分かってるから。
「はいはい。大学になったらのびるんじゃないの?私は知ーらなーい!」
軽く背中を叩いてから走り出してみる。
私の後を追う徹は、すぐに私に追いついた。
徹はまだまだのびていく。私をおいて。
私の体の成長は、残念ながらここまで。
心にしまった想いは軽く、だけど小春の陽気には溶けない。
あなたが私を諦めても、ずっとあなたを見続けてる。
あなたが私を追い越した時、また私を見てくれるように。
心の成長はまだまだ頑張らないと。
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