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高校時代、俺は寮生活をしていた。
ある夏、やけに寝苦しい夜だった。
俺の住む寮は二人一部屋が基本だった。だから、俺ともう一人がその部屋で寝ていた。
時間は分からない。ただ、何か気配を感じた。
(む~、隣の馬鹿が遊んでるな・・・)
カーテンを閉めているが、月の明かりで人影は見えた。ただその影を見て、絶句した。
髪が長い。おそらく腰まで伸びているだろう。そんな人間は、この寮にはいない。
(これはまた、随分とはっきりした奴だな・・・)
俺が見てきた幽霊の中で、ここまで自己顕示欲の強い幽霊は珍しい。
ガラガラ・・・
何故か窓が開いた。カギは閉めたハズだ。最近隣の馬鹿が窓から入って来るから、確かに寝る前にも確認した。
ちなみに、となりの馬鹿は男。髪は短いので同一人物では有り得ない。
(・・・どうしよう?)
幽霊を見るのは初めてじゃないけど、ここまでうるさい奴は珍しい。
外では風も吹いているのか、カーテンがなびいていた。もう少しで顔が見えるけど、見えない。
やがて、窓を閉めて奴は去っていく。とりあえず、無事だ・・・って相方はどうなんだ?
「なぁ、起きてる?」
「・・・起きてるよ。」
ちゃんと起きているようだ。しかし相方は寝言で叫ぶ男、油断出来ない。
「今の、見たか?」
「・・・あぁ。」
寝ぼけたって事はないようだ。それにしても、入った時から何かあるって予感はしていたけど、まさかここまで分かりやすいとは・・・
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