二人が見た

2/3
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
高校時代、俺は寮生活をしていた。 ある夏、やけに寝苦しい夜だった。 俺の住む寮は二人一部屋が基本だった。だから、俺ともう一人がその部屋で寝ていた。 時間は分からない。ただ、何か気配を感じた。 (む~、隣の馬鹿が遊んでるな・・・) カーテンを閉めているが、月の明かりで人影は見えた。ただその影を見て、絶句した。 髪が長い。おそらく腰まで伸びているだろう。そんな人間は、この寮にはいない。 (これはまた、随分とはっきりした奴だな・・・) 俺が見てきた幽霊の中で、ここまで自己顕示欲の強い幽霊は珍しい。 ガラガラ・・・ 何故か窓が開いた。カギは閉めたハズだ。最近隣の馬鹿が窓から入って来るから、確かに寝る前にも確認した。 ちなみに、となりの馬鹿は男。髪は短いので同一人物では有り得ない。 (・・・どうしよう?) 幽霊を見るのは初めてじゃないけど、ここまでうるさい奴は珍しい。 外では風も吹いているのか、カーテンがなびいていた。もう少しで顔が見えるけど、見えない。 やがて、窓を閉めて奴は去っていく。とりあえず、無事だ・・・って相方はどうなんだ? 「なぁ、起きてる?」 「・・・起きてるよ。」 ちゃんと起きているようだ。しかし相方は寝言で叫ぶ男、油断出来ない。 「今の、見たか?」 「・・・あぁ。」 寝ぼけたって事はないようだ。それにしても、入った時から何かあるって予感はしていたけど、まさかここまで分かりやすいとは・・・
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!