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刻暦一九○二年
― リルフウッド孤児院 ―
前を見る事すら、ままならない程の猛吹雪の中。
その凍てついた白銀の世界をフード付きのコートを纏う事で、寒さから身を守り皮のブーツで雪の原を一歩、又一歩と踏み締めている男がいた。
その行く先は、資金もそれ程多くない木造の孤児院だ。
やっとの思いで雪原を潜り抜けた男は、すぐさま孤児院の中へと足を運ぶ。
院内へ入り一息つくと男は声を上げる。
「すいません!デル・アレドと申しますが」
コートに積もっていた雪を払いながら男はデルと名乗った。
コートのフードからデルの顔がそっと覗いてみえる。
その顔は、エメラルドグリーンの背中まである長髪を一本に束ね、そんなに日に焼けていない白い肌。
ブルーの瞳と美しい顔立ちにトレードマークとも言えよう眼鏡が、その瞳を映えさせてくれる。
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