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刻暦一九○五年
― ルセインの街 ー
孤児院からアウラが出て、三年が経った。
生活にも慣れ住居もそこそこ良くそれ程、苦な事も無く静かに暮らしている。
その家は木造の大きな家で、クラシック調の“お屋敷”と言う雰囲気を出している豪勢な家。
正直、男と子供の二人暮らしには不向きと言っていい程に広すぎる。
「ただいま!」
買い物袋を両手いっぱいに抱えて、ドタバタと勢い良く扉を開けたのはアウラ。
「お帰りなさいアウラ、もっと静かに入ってきなさい」
「あはは、御免」
アウラは買い物袋を近くにあったテーブルに置くと、食事の仕度をするデルを手伝う。
―― アウラの瞳はデルと暮すうちに次第に穏やかで優しい瞳へと変わり、あの冷たい瞳ではなくなっていた。
四歳だったアウラは七歳に。デルのお陰か良い子に成長した。
そんなアウラはデルを見ると時折考える事が……。
デルは、何故に自分を養子に選らんだのか。
何故、養子をとったのか。
こんなに広い家に一人で住んでいたのか、今の生活の様にメイドも無しに……。
他にも多くの疑問がアウラの中で生まれ始めていた。
一番大きな疑問は……デルは、どんな仕事をしているのか。
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