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「……じゃあさっ!今私が猫なで声で桜くんに甘えまくったら、桜くん落ちちゃう?」
つい今まで俯いていたかと思えば、次はこれだ。まったく……東は油断ならない。
「……かもな。お前を守りたくなっちゃうぜ。きっと」
「む~全然動じなーい。もうちょっと狼狽えてよ。もう……」
……今のセリフを女嫌いになる事件の前に聞かせてくれたら、俺はきっと笑うだけではやり過ごせなかっただろう。
「あ~笑ってる!
……なんか私だけ恥ずかしい思いをしてる気がするんだけど」
「ハハ。
……良いぜ?そんなに気を使わなくても。いつものお前のままで良い」
そう言って俺は東の頭を、いつも誰かさんを撫でていたかのように撫でた。
「ん~いつもの私か……。でもいつものままだったら……」
ガバッと俺に抱きついてくる。
「桜くんが好きで好きで離したくなくなっちゃうよ?」
「……あぁ、それで良い。いつものお前のままでいてくれ……」
東の好きにさせたい。俺はもう東を拒絶はしない。
……四年前の事、二ヶ月前の事、その二つの事の償いになればいい。
「あ……」
俺も東の背中に腕を回し、抱き返してやった。
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