東の過去

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「私は桜くんが何も言わず、行ってしまったことが寂しくて、悲しくて……何度も泣いたよ?だって……たとえ桜くんに鬱陶しく思われていたって、私は……桜くんが好きだったから」 鬱陶しく……? 違う!そんな事は…… 「東!俺はお前を鬱陶しくなんて……」 「ううん、良いの。今はそうやって否定してるけど、桜くん私に言ったんだよ?鬱陶しいって」 記憶に無い……。でも、東がこんだけ悲しい顔をして話すんだ。決して嘘とは思えない……。 「…………」 「良いんだよ。……今は近くにいてくれてる。それに好きって言ってくれたし」 先程の事だろう。 俺だけ浮かれてると思っていたけど案外東も同じだったりするかもしれないな…… 「話戻すね。……それで、桜くんを失った私は亡霊みたくなってた。その時にね、香澄さんが来たの。「キョウ君が行っちゃったのは私のせいだ」って。凄い悲しそうな顔して」 「私のせい」……その言葉が俺の胸に刺さる。アルバイトの時、香澄にその時の話を聞いたから余計に強く深く……。 「香澄さんは包み隠さず全部話してくれたんだ」 香澄は東に話すべきだと思ったのだろう。 ……俺が好いていた本当の相手に。
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