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式神と独り
陰陽師が死んでどれくらい経ったか分からない。
分からないけど、すごく時間が経ったある日。
私は民家を見付けた。
質素な家だったけど、ちゃんと灯りもあった。
私は、その民家の戸を叩くことにした。
出迎えてくれたのは、優しい顔をしたおじいさんだった。
おばあさんはずっと昔に死んでしまったと。
私が事情を説明すると、おじいさんは優しく言った。
「それは大変だったね。好きなだけここで暮らしていいんだよ」と
私は、おじいさんと一緒に住むことにした。
私は薪割りとか畑仕事とかを手伝って、おじいさんにご飯を食べさせてもらった。
おじいさんは本当に優しくて、見ず知らずの筈の私を可愛がってくれた。
私は知っていた。私が来たために、おじいさんが食べる分のご飯が減ってしまったことを。
いくら私が仕事を手伝っても、おじいさんが作る分の食べ物には限界があった。
それでもおじいさんは嫌な顔もしないで、いつも私を気遣ってくれていた。
私は、そんなおじいさんが大好きになっていった。
私はなんとかしておじいさんに楽をさせて、そしてずっとここに住んでいたいと思った。
これが愛情なのかと
分かりかけたような気がした。
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