解けた赤い糸

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「もうじきつくよ」 車内にある置き時計を横目で確認し儚に伝える 儚は暇つぶしに読んでいた本を閉じテーブルに置く 『知っておこう高校生活のすべて』という本だった。 入学してから不自由しないように七瀬が用意して渡したらしい 「ふふっ、キンチョーするっ」 隣に置いていたテディベアを抱きしめピタリッと七瀬にもたれ掛かる はたからみたら面白いくらいに体格差がわかる 「お兄ちゃんに会えるよ…ねぇ、いつ会えるかな」 色のくすんだテディベアを撫でる 毛はすっかり逆立って滑らかな質を失っていた 「いつかは、校内にいるんだし会おうと思えばいつだって」 「ありがとうね、お兄ちゃんの居場所調べてくれて」 七瀬はテディベアと戯れる儚を見てすぐに目をそむける 「お父様じゃきっと調べてくれなかったよ」 まぁ、行きたい高校をわざわざ指定してるんだからあのジジィが調べてない訳無いけどな、と内心七瀬は思う。 そして確実に、そこに儚の兄が在学していることくらいわかっていただろう、それなのになんで儚を送り出したのかその心理も読めなかった なぜ今さら兄と弟を引き合わせる気になったのか 「なな君は優しくてかしこいんだねっ」
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