2024人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぼく、ね…クマさんと遊んでたんだよ、そしたら首のとこの糸がほつれてて可哀相だなって…だから」
ソッと隠すように後ろに置いていた物を差し出す
鋏、だった。
よく学生が仕様するソレより若干大きい銀一色のシンプルなもの。
刃が鋭いのか、閉じた状態なのに刃先は鋭く尖っていた
小さな少年の手には、とても不釣り合いで不似合いだ。
「あぁ…儚には重かっただろう?勢い余ってしまったのかな」
苦笑しながら『怪我がなくてよかった』と弟…儚の頭を撫でる
「ぬいぐるみくらい頼んだら新しいのを買ってくれるだろうし、もう悲しむことはないから」
「だめっ、かわりなんていらない…だってこの子は、お兄ちゃんがぼくにくれた物だもん」
捨てさせるまいっ、と儚がぬいぐるみを抱きしめると、誤って切ってしまった穴から綿が溢れ裂け目を広げる
「…仕方ない…習ったばかりだから下手だけど…」
そう言って持ってきたのは手芸セット。
最初のコメントを投稿しよう!