プロローグ

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「ぼく、ね…クマさんと遊んでたんだよ、そしたら首のとこの糸がほつれてて可哀相だなって…だから」 ソッと隠すように後ろに置いていた物を差し出す 鋏、だった。 よく学生が仕様するソレより若干大きい銀一色のシンプルなもの。 刃が鋭いのか、閉じた状態なのに刃先は鋭く尖っていた 小さな少年の手には、とても不釣り合いで不似合いだ。 「あぁ…儚には重かっただろう?勢い余ってしまったのかな」 苦笑しながら『怪我がなくてよかった』と弟…儚の頭を撫でる 「ぬいぐるみくらい頼んだら新しいのを買ってくれるだろうし、もう悲しむことはないから」 「だめっ、かわりなんていらない…だってこの子は、お兄ちゃんがぼくにくれた物だもん」 捨てさせるまいっ、と儚がぬいぐるみを抱きしめると、誤って切ってしまった穴から綿が溢れ裂け目を広げる 「…仕方ない…習ったばかりだから下手だけど…」 そう言って持ってきたのは手芸セット。
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