透明な直線

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静かな校内に二人分の足音が響く 先頭は七瀬、先に出た儚にあっさりと追いついて、今は先を走って後棟3階に導いている……といっても、七瀬も多部の説明通りの道を辿ってるにすぎないけど。 はじめての校内を堂々と走ってるあたり、行動力は旺盛なのかもしれない そして二メートル後方には儚 やはり足は遅く息は切れている まるで、漫画にでてくるような温室育ちのお坊ちゃま体質 「はぁ……っ」 今も階段に昇ってる途中で足を止めてしまった 「儚?」 先に昇りきった七瀬は心配そうに儚を見下ろす 「悪い…気遣ったつもりなんだけどな」 階段を降りて、儚の小さな背を撫でて息をととのえさせる。 「ななくん…」 七瀬の左手を取りおもむろに自分の胸に押し付けた 動揺したのか、手を戻そうとしてカシャッと手錠がぶつかって音をたてる 「今、スッゴく…ドキィってして…くるしぃ…なんでかな?ひっ…疲労感?それともおにいちゃんに会えるから?」
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