透明な直線

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窓際に立ち、外気にふれながら一人読書をしている穏やかな表情をした優美な少年 「お兄ちゃんっ!」 そう呼びながら小さな体で本を読んでいる兄……次彦の腰に飛びつき胸(というよりは腹)に顔を埋める 飛びついた際、上方から苦しげなうめき声が聞こえたけどそんなもの儚には届かない 「おにぃちゃん…お兄ちゃんお兄ちゃんっ」 幾度も繰り返される『お兄ちゃん』という呼びかけ でも今はいつもとちがう しっかりと本人に呼びかけている… 次彦は正直この状況についていけなかった まだ読みかけていた小説を床に落としたけど意識の端にさえ気に止められなかった 下を向けば自分を『お兄ちゃん』と泣きそうになりながらも呼び、腰にしがみついてる小さな子供 顔を埋めてるせいでその顔は見えないけど……
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