透明な直線

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次彦は椅子には座らず儚のそばに立つ 「儚…本当に久しぶりだな」 昔と同じ……いや、もしかしたら昔より質がいい細く滑らかな真っ黒の髪を撫でる 「話したい事や聞きたい事が多すぎて何から話せばいいか…」 「なんでもいいよっ!おにーちゃんとお話したいっ」 どんな話題でもいいから 二人の空白の時をうめるように話しつくしたい 「……じゃあ…父さんは…元気か?」 「ん?んー…よくわかんない?」 儚の曖昧な返事が引っ掛かったけど、人の体調なんて完全に把握できないかと割り切る 「そうか…あっ、母さんは相変わらず元気でやってる、何度か再婚の話もでたりするくらいにな……けど、それなりにうまくやれてるよ、そっちは?父さんは女性に人気があったからもしかして……」 「再…?んー?…んー、お父様は一人で僕を育ててくれてるよ?」 どうやら再婚はしてないらしく、次彦は男手一つで儚を立派に育ててくれた父に感謝した 「お父様って……いいぞ、オレの人形像にふさわしすぎるっ!」
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