20人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
灰色に染められた世界は、轟音に支配されていた。
天にあるはずの太陽、その恵みの光りを覆う帳は、何か怨みでもあるかのように大量の雨粒を落としている。
生み出す轟音はそのせいだ。
空と似た色をした地上もその色を空へ返したがっているのか、灰色を凝縮した煙を立ち上らせている。
その単色の中で、唯一つ浮いた存在があった。
暖色に染め上げられたその人影は、灰色の光景にの中では一際異彩を放っていた。
硬く重い足音を鳴らし、巨大な人影は歩いていく。
何かを探しているように見渡していたその人影は、不意にコンクリートの山の前で立ち止まった。
空気の炸裂する音と共に繋げていた物を落とすと、空いた左腕で瓦礫を払う。
小さな、人影が倒れていた。
天井が無くなった事で雨粒は嬉々として人影…彼女を濡らしていった。
冷たさで気付いたのか、緑の髪を濡らした少女が起き上がる。
意識も定かではない虚ろな瞳で、彼女は橙色の巨人を見上げた。
「a―――…」
少女は手を延ばす。
無意識に延ばした、その手の行方は彼女すらわからない。
だが、少女の前に立つ巨人は知っていたのか。
碧い光を眼に燈し、その巨人は手を差し延べた…
鋼鉄の腕を。
最初のコメントを投稿しよう!