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一本の道が続いていた。
周りにはどこまでも続く広大な草原。背丈もある草や花もあれば、小指ほどの小さな花まで咲いている。
そして見上げた先には、空の蒼がどこまでもただひたすらに続いていた。
その中を今、一台の黒いバイクが疾走している。
タンデムシートには大きな旅行カバンがぶらさげあった。
しばらく走っているとバイクの先にフェンスが見えた。
それは何メートルとかという平凡なサイズではなく、地平線の彼方まで横一線にひかれていた。
そして次に見えたのは検問所。
木造でかなり古い。
打たれた釘は錆び付いていて、今にも崩れてしまいそうなほどに。
黒いそのバイクは徐々にスピードを緩め、やがて検問所の真横で止まった。
検問所には青い軍服を着た女性の検問警備員が1人、ラジオに耳を傾けていた。
「通行許可書と身分を証明できるものを」
やるせない女性の警備員の声が響いた。
バイクの乗り主は羽織っていたライダースーツのポケットを開け二枚の紙を取り出し警備員に見せる。
「そう、あなたが。ようこそ、ダージリンへ。通ってもいいわ。」
それだけ言うと再び女性の検問警備員はラジオに耳を傾けた。
そっけないやり取りではあったが、こうして再びライダーはバイクを走らせ始めた。
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