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軽く深呼吸をするとドアを2回叩く。
コンコン
「どうぞ」
部屋の中からしぶい女性の声が響いた。
「失礼します」
ガチャリとドアを開ける。中に入るとまず周りに目をやった。これといって大した装飾品もなくあるのは白い壁と時計くらい。
目が部屋を一通り一周すると真正面をとらえる。大きな机には書類が山積みになっていた。その隙間からはこの部屋の所有者であると思われる、白髪のしわを少しよせた初老の女性が書類にサインをしていた。
しばらく無言が続く。部屋にはペンを紙の上で踊らす音だけが聞こえた。
数秒、この沈黙が続きやがてペンと紙のこすれる音が止む。初老の女性が目の前に立つ青年を見る。目と目が合った。
先に均衡を崩したのは青年だった。
「本日よりこちらに配属となったクロノア・フロンティスです」
クロノアと名乗った青年はそう言って一瞬だけ敬礼をする。
初老の女性はクロノアと名乗る青年を見定めるように下から上へと目を配る。
「思っていたより若いな。ようこそ、クロノア。はるばるここまですまなかったな。私はここの監督を務めるシャリーだ。よろしく頼む」
そう名乗った初老の女性シャリーは、再び書類へと目を落としペンを動かし始めた。
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