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ああ、ダメだダメダメだ。
頑張っても頑張ってもらちがあかない。
締め切りは刻一刻と近付いてゆくのに、稔(ミノル)の絵は未だ完成品にかすりもしない。
それどころか、たった今、今月これで25回目となる教授からのダメ出しを頂いたところだ。
『いつもいつも、うっすい絵描くねー…君は。』
教室もといアトリエ内を徘徊していた教授は、稔の油絵を見るなりそう言ってため息をついた。
…薄い絵。
この単語がどんな意味を孕んでいるのか、自分には半分程しか理解出来ないもどかしさを感じていた。
稔がこの大学に通い始めてから3年が経つが、今もまだ自分の絵の方向性が定まらないでいる。
宙ぶらりんな『絵を描き続けていたい』という思いだけでここまできてしまった事に今さら後悔した。
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