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レイが向かった直後、
大通りでは戦闘が始まっていた。
戦車や高射砲等の放った光弾や歩兵の銃弾が異形を引き裂いた。
しかし、戦況は先程とはうって変わっていた。
先程までの戦闘をオペラとするなら今はさしずめレクイエム。
にじり寄る異形達は銃火器の集中砲火も恐れずに前進していた。
そして、互いの軍団が混じり合った。
「司令部!航空支援を回してくれ!バリケードが突破された!」
「第三分隊遅れてるぞ!早く持ち場につけ!」
「畜生!ぶっ殺してやる!化け物共が!」
「第二小隊壊滅しました!」
「構わん!撃て!どうせもう助からん!」
「うわあ!味方にやられるぞ!逃げ…」
「おい!そっちに行くな!まだ奴らが」
「ギィヤアアア!!」
「後退だ!後退しろ!」
「砲撃部隊!時間を稼げ!撃って撃って撃ちまくれ!」
「腕と脚の内四つまで残ってる奴だけ助けろ!他は助からん!!」
「後退!後退ぃ!!」
……
…
大通りで歩兵部隊が壊滅しかけている時、すぐ近くの都市A区の大通りを警備している部隊があった。
大通りから枝分かれしている通りの一つ。
ビルに囲まれた道路の上に鉄の塊が鎮座していた。
その塊の中心から、一つの煙が立ち昇った。
「……やれやれ、こりゃB区は随分血生臭い有様だぞ。」
煙の立ち上る場所から気怠げな声が上がった。
煙の元である煙草をくわえている男は恐らくは操縦席なのだろう、モニターや操縦桿が配置された空間にあぐらをかき、脚を外に投げ出していた。
と、操縦席の中にある通信機から電子音が鳴った。
『軍曹!またゴーレムの主電源を落としているな!いい加減軍紀違反記録を更新する趣味を何とかしろ!』
恐らくは女性だろう、通信機から聴こえる声は感じ取るに十分な怒気を含んでいた。
「一服ぐらいで叫ばんで下さい中尉、どうせお飾りでお留守番の嫌われ者のウチら(第8機械兵少隊)にゃ誰も見向きしやせんて。」
『馬鹿者!!だからこそ任務をしっかり全うし、我等の評価を向上させるのだ!それだと言うのに副長の貴様がその調子でどうする!』
男はいかにもやれやれという風に首を竦めた。
『おい軍曹!聞いているのか!?B区の歩兵部隊が抜かれた、もうすぐここも』
「ああ、どうやらそのようで。少々手遅れだが。」
男の言葉のすぐ後、目の前のビルが音を立てて崩れた。
ギィ ギィ
粉塵の中から聴こえる異形の息遣いが戦闘開始を告げていた。
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