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必死になって恋人の死という事象から逃げようと、事実ではないと思い込もうとしている。
・・・・・それでも、柩は心のどこかで理解しているのだろう。その顔には隠しきれない絶望の色が浮かんでいる。
つまり、彼の死を。
―――昴桂太が、死んだということを。
・・・・・まったく。
こういう時は良すぎる理解力というのは嫌なものだね。
強がる前に絶望と諦めが来てしまう。
柩もそうだったみたいで、ストン、とその場に崩れ落ちるみたいに座り込んだ。目には、じわじわと涙が溢れてきている。
「―――そん・・・な」
声が震えている。
感情が自分で制御できないのか、そこからは、もはやなにを言っているのか分からなかった。
―――ははは・・・・・
僕はなんでこんなに冷静なんだろう?
友達で、幼馴染みの恋人が死んだというのに、はっ、僕は残された恋人の観察をしている?
笑っちゃうね。
僕にとって彼等の存在は、あまりにも重要じゃなさすぎるみたいだ。
「―――っざけるなよ!?」
進の怒声。
悲しみに満ちた響きに、ようやく教室にいた他の生徒達も何事かと顔を出してくる。
気持ち悪くなるような数の好奇心いっぱいな目、目、目―――。
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