一難去らずにまた一難

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もしも。もしもだ。  もしも、その言動が大まじめだとしたら、一般市民の義務として今すぐ救急車を呼んでやる。  はっきり言ってそんな義理はないが、どっからどうみても、お前の頭は集中治療室並の重傷だ。 「……お前なあ、こんな小さいことは言いたかないけど、年上には『さん』ぐらいけたらどうだ、人として」 「なんで?」  そう言いながら、東京湾もしくはICU送りが妥当と思われる変人は、キョトン、といったぐあいに頭を傾ける。  何でコイツがこんな残念な性格してんだよ、と夕日に向かって叫びたいくらい……可愛い。  性格と容姿、天秤にかけたら凄い勢いで右に傾くに違いない。ガコンの拍子に皿が外れてしまってもおかしくない程に。 「理由がないなら、おかしなこと抜かすな。ばか」  変人は、ふん、と鼻を鳴らしながら踵でくるりと回り、僕に背中を向けて歩き出した。  …………。  つうか、鞄返せ、あほ。
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