一難去らずにまた一難

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 だいたい、どうなんだ? 一般的に見て、この図は。  鞄を二つ、両手に持ったミスユニバース級の女子高生が先陣を切って颯爽と歩き、その後ろに手ぶらの一般男子。  なんだ、これ。  新種のメルヘンか?  2学期も始まったばかりで、まだ蒸し暑いこの季節。前を歩く変人は、涼しげに肩で風をきる。  いきなり。  変人は、半回転を決めた。つまり、後ろを歩く僕と向かい合った。  しかし、さすが変人。  そこで止まったりはしない。そのまま、後ろ向きに歩く。  ……おいおい。そろそろ、一緒に歩いていること自体、恥ずかしくなってきたぞ。  と、いうか、あれ?  僕は何でコイツと歩いてるんだ? 「日下部千裕、私のこと『姫』って呼ばしてやらあ」  は? 「そしたら、私も、千裕って呼んであげる」  あのぉ、その、僕が『千裕』って呼んでもらいたい、みたいなニュアンスは何ですか?  そんな絶品満面の笑みで甘えた声出したってな……お断りじゃ、ボケ。
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