災難はいつも唐突に

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 ……はんりょ。  はんりょ?  なんだ、昨今、新しい擬音でもできたのか?  あれだな、はんりょ。意味の解らない事を告げられた時に使う新語だ、きっと。  だったらそうだ。この場面で使うのは1番適しているのではないか。 「はんりょ」  取りあえず、口に出してみる。 「そうだ! 日下部千裕!! 課題をクリアしたら結婚してやらあ!!」  気のせいか、会話が成立してしまった。  その内容には、敢えて触れないでおこう。この変人と関わるのはご遠慮したい。 「そうだな、明日の放課後から始める。 楽しみにしてろよ。……じゃあなっ」  そう、一方的に押し付けるだけ押し付けたその変人は、「トウッ」と、人造人間のあのお方みたいな声を上げながら、教卓から飛び降りた。  ふわりとプリーツのスカートがめくれ上がる。  ブイサインがプリントされた下着が、しん、とした教室に晒される。  最悪だ。あのパンツ……あいつと同じ趣味か?  見たことある、見たことあるぞ。 『チー君、ちょっと失礼』と……姉貴が、僕の顔を跨いだときに。  僕の中で激しくサイレンがなる。  あの変人、心なしか姉貴と口調が似ていたような……。  ま、まさか、姉貴と同じ人種?  …………忘れよう。先日、姉貴が結婚してようやく呪縛から解放されたんだ。 今のやり取りは忘却の彼方へ葬ろう。
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