東京にて

3/3
前へ
/5ページ
次へ
翌朝起きた時には拓はもう仕事に行っていなかった。 時計を見ると10時ちょっと過ぎだった。もう少し眠っていたいところをなんとか布団から抜けだせた。 シャワーを浴びて一息ついてからコンビニに行くことにした。昼飯と求人情報誌を買うためだ。 昼飯にたらこスパゲティを食べながら求人誌をチェックしてゆく。 電車通勤はしたくないので歩いて行ける範囲で探していたらちょうどいいのが目についた。 時給1,150円。工場内での組み立て作業。と書いてある。通勤距離も歩いて行けそうだ。 すぐに電話して面接の約束をとりつけた。明日の11時に板橋本町まで来てくれることになった。 面接だからやっぱスーツかと思ったがいっちょうらのスーツはあいにく実家で眠っている。急きょ、拓のスーツを借りることにきめた。たぶん持っていると思うのだが。 明日の面接のため履歴書の作成にとりかかった。 三十路目前にもなると履歴書の職歴欄には書ききれないほどの履歴がある。その中で長く続いたものだけをピックアップしてどうにか枠におさまった。 工場づとめは初めてではなかった。デジカメや携帯電話、自動車部品などわりと今まで工場で働いた経験が多かった。 夜になり拓が帰ってくるとさっそくスーツを出してもらい試着してみる。するとぶかぶかでかっこ悪かった。それもそのはず52㎏の自分と85㎏の拓とでは33㎏も体重が違うのだから。 結局明日の面接は普段着で行くことになった。 次の日、仕事にいく拓を見送ってからしばらくごろごろしていたらいつの間にか10時半になっていたので慌てて準備して部屋を飛びだした。あと5分で約束の時間だ。 待ち合わせ場所は板橋本町駅からすぐのコーヒーショップだ。走って行くとスーツ姿の男性が店の入り口で時計を気にしながら待っていた。 声をかけてみると案の定面接の人だった。どうやら面接はこのコーヒーショップでおこなうらしい。 飲み物を進められ、コーヒーは飲めないのでオレンジジュースを注文した。 まず最初に名刺をもらい。その肩書に驚いた。代表取締役社長となっている。じきじきに社長が面接にやってきたのだ。しかも見た感じ自分とさほど年齢はかわらないように見える。若作りだろうかとその時は思った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加