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「どういうことですか!父上、母上…!」
他のどの部屋よりも絢爛豪華な装飾を施されている一室で怒鳴り散らす男は、目の前にいる二人の両親を睨みつけた。
「どういうことも何も……なぁ?」
「問題はなかったじゃない……ねぇ?」
バツの悪そうな顔をする父、前王『ナダト』と その王妃『イサヤ』…は、反対ににこにこと微笑む。
「確かに…精霊フェイラムと精霊クジャータの加護はありましたが、代々継承の舞は四季精霊たちがー…!」
「今回は例外だったのよ、リオウ」
にこやかに受け流す母、イサヤには逆らえず リオウはうっ…と黙り込んだ。
そう…代々 王位継承の舞は四季の精霊たちによって献上されてきた。
春の精霊『ソリア』、夏の精霊『アレス』秋の精霊『ラナクス』、冬の精霊『イーリー』。
リオウが見知った精霊たちは、月の精霊『フェイラム』と太陽の精霊『クジャータ』の使いである。
その精霊たちがこの国全域を守護することによって…季節は巡るのだ。
そんな精霊たちから献上される舞は、この国では最も神聖なものとされ…王族と民が平和と繁栄を誓う…そんな思いもこめられている。
「でもリオウ、…見とれてたじゃないの」
「は?!」
「史上初の舞姫だものね、ぽーっとしちゃって…まばたきしてた?」
「っ…して…、ましたよ!あれは…っ驚いただけ…、です!!」
「へぇ~~…」
いつの間にかにこにこがにやにやに変わっているのに気付き平静を装うが…遅い。
リオウは存外嘘がつけないタチで、顔に出やすいのだ。
先ほどの光景を頭に浮かべてしまったのか、頬に赤みがさしていた。
「そんなに動揺しないで リオウ、これから一緒に住むんだし」
「……………………はっ!?」
さらりとした母の軽いようで聞き捨てならない言葉に リオウは目を見開いた。
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