第一章

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第一章

華の大国『アーシュカリア』。 そこは…艶やかで、華やかな…毎日が活気に包まれた国である。 祭事(まつりごと)では随一を誇る其の国は…今日(こんにち)新しい王を迎える儀式が行われる。 そこには、国から出ることを希有される二人の王の姿もあった。 砂漠の国を支配する国王と、その従者。 大海の向こうの国を支配する女王と、その護衛。 当たり前だが…精霊の国として名高いアーシュカリアの一番の祭事として催される『王位継承』の祝いの為の参列だった。 アーシュカリアでは王位継承の際に、精霊からの祝いごととして舞を献上される。 月の精霊フェイラムと、太陽の精霊クジャータからの使いで四季の精霊が代々賜ってきた舞は それぞれの精霊ごとにことなるが、この国で何よりも神聖な行いとされている。 …指定の刻限、太陽が登る頃。 国民が見守り、他国の王が目をくばせる。 囲むように象られた会場のその中心に、国王と王妃…そしてその一人息子である王子が姿を現すと、場は一斉に拍手喝采で賑わった。 強く、生真面目なその王子の性格は…アーシュカリアの民に慕われている。 王子の名は『リオウ』。 精霊の国の…新しい王になる男であった。 父王に諭されリオウが中央の祭壇に足を踏み入れたその瞬間、眩い光がリオウを包み込み 照らした。 「…っ…これが…」 リオウが驚きで言葉を漏らすと、それを掻き消すかのような声がその場全体に響き渡った。 『『汝の継承を認めよう リオウ』』 ふわりと舞い降りた二人の精霊。 美しき姿は千年前と変わらず、力の衰えなどまるで感じない姿。 『我等からの贈り物を…どうか…』 男の姿をした精霊フェイラムは…柔らかな動作で膝を折ると、手を壇上に向けた。 そこに立っていたのは…見知った四精霊ではなく…。 リオウとさほど変わらない齢くらいの…少女。 『……継承を讃(たた)える舞を授けようぞ、我が王 リオウよ』 妖艶の美貌を誇る太陽の精霊クジャータもその膝を地面につかせた。 この物語は アーシュカリアの王と、その舞を携わった舞姫の…。 この出逢いから始まる…。 アーシュカリアの舞姫 【第一章】  
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