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「うわっ、降ってますねー」
会社の後輩、小宮和也が空を見て言った。
「ほんと……土砂降りじゃない」
青野星佳は驚いていた。
あんなに晴れていたのに。
その日、星佳は恐ろしく奇妙な体験をしていた。突然日常と引き離された。
それにつけてこの天気である。
――なんなのよ、まったく。
「青野さん、早いところ帰りましょう」
星佳は水溜りにできる波紋を見つめたまま、口を開かなかった。
家に帰るつもりは、なかった。今朝のあの男を捜さなければ。
そう思ったところである疑問が頭をよぎった。
小宮には、あの男も見えていなかったのだろうか。
「ねえ、小宮君」
「なんですか?」
「あの……今日車が動かなくなったじゃない。あの時だれか車の前通らなかった?」
小宮は少し考えるふうにした。星佳は少し緊張した。
「誰も通らなかったと思いますよ」
小宮はこちらを見て言った。
そうではないかとは思っていたが、それを聞くとやはりショックではあった。
今朝のあれは何だったのだろう。星佳はあの透き通った青空に思いを巡らせた。
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