ドーテイ野郎と根暗女

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真っ白になるくらいにブリーチされた長い髪は、海外ドールの様に人工的で傷みきっている。  触ったら、キシキシと嫌な音を立ててしまいそうなのに、それを更にヘアアイロンでくるんくるんに巻く。確かに今風ではあるだろうけど。 「もう、ヤバイだろ。無理だろ。熱をあてるな!髪を染めるな!」 学校の図書室。 澤井綾人が、思わず、そう叫んだ。壁には“図書室では静かに”と言う掲示物が貼られていたが、案ずる事なかれ。  放課後の図書室に、わざわざ来る奴なんていない。静かなもんだ。小うるさいのは、彼くらい。 海外ドールこと、赤西洋子は、彼の様子に疎まし気な顔をして、紙パックのジュースを、ちゅうちゅうと飲んでいた。  今日は、ミルクティー。低カロリーバージョンだ。  「染めないのは無理。プリンになる。」  「そんな、奴いっぱいおるわ。」 明るい髪になればなるほど、色の対比は明らかなものになる。  よって、ちょっと弾けたクラスメイト達も、彼女程目立たなくともプリンだ。ソースが、だらだらプリンもいる。  けれど、それは彼女の美意識にはそぐわないらしい。 
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