思い出・記憶

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「で 思い出してきたって何をだ?」 士がまだ テンションが高いままユウスケさんの額を指で突いて静かにさせた 「士さん あなたは…紛れもなく破壊者だと そして あなたを止められるのも俺しかいない」 俺は強い口調でそう言って 千円札一枚を置いて立ち上がった 「ちょっと待ってくださいよ 士君は破壊者なんかじゃ…」 夏海さんが立ち上がり俺の前へ立ちふさがった 「……失礼します コーヒー、ごちそうさまでした」 小さい声でそれだけ言って 鞄を肩に担ぎ写真館から出た 出たところの扉のすぐ横に海東さんが寄りかかっていた 「やぁ 士と知り合いだったんだね」 海東さんはそう言って写真館の中に入っていった 「…知り合い…か」 俺はため息一つこぼして自転車にのり 写真館をあとにした 「士 今、お友達が来てたみたいだね 僕の知らない…」 海東が士たちがいる部屋に入りながら言った 「海東、何しに来た?」 士が椅子にもたれながら聞いた 「今日は 士にプレゼントを渡そうかと思ってね」 そう言って海東が取り出したのは あの絵柄のない一枚のカード 「これがどうかしたのか? 子供の遊びにでもはまってきたわけじゃないだろ?」 士はそう言いながらカードを受け取り、見ていた 「ディサイドのだよ 数日前に僕が見つけた そのうちの一枚だよ」 「どうして俺に渡す?」 士がカードを机に置き首にかけたカメラをいじりながら聞く 「彼は、君を壊そうとしている 君は彼のことを覚えてないだろうけど 彼は着実に思いだしているみたいだ だから 君が持っているのも悪くないと思ってね」 海東はそう答えながら部屋を出ていった 「士君、行ってしまいましたよ」 夏海が海東の行った先を見ながら言う 「ディサイド…か」 カードを再び眺めながら士が言った
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