貴女が貸してくれた傘

2/8
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「雨か…まいったなぁ」 俺は会社の前で立ち尽くしていた。仕事が何時も通りの定時に終わったのは良かったが、まさか雨が降ってくるとは…。 確か、テレビのニュースで夕方頃から雨が降るって言っていたのを今思い出し後悔した。 勿論、俺は今傘を持ってはいない。 周りの人達は、傘をさして帰路に向かっている。中には、飲みに行くやつや彼女とデートにいくやつもいるかもしれないが…。 仕方ない、俺はびしょ濡れ覚悟で雨の降る道へと一歩を踏み出した。 「雨が降って来たわね」 窓の外をぼんやり見つめて言ったのは私の友達でもあり先輩でもある川島先輩である。 「そうみたいですね…天気予報あたったみたいですね」 私も先輩につられて窓の外を見つめる。 「南ちゃん…傘持って来た?」 「えぇ」 「そう、なら二本持って来た?」 「二本?いいえ、一本で十分ですし…」 「じゃあ、二本持って帰りなさい。店に置いてある傘持っていっていいわよ」 「はい?」 私は、川島先輩の言っている事が解らなかった。傘は一人、一本あれば十分だろう…。それを何故二本? 私が、先輩に尋ねてみようとした時に先輩が窓の外から見える男性を指さした。 「あの人のための一本よ」 .
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!