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既に傘を差していない僕らに対して、雨は優しかった。 激しく打ち付けることも、止んでしまって撫でることをやめもせずに、ただ優しくしっとりと僕らを濡らした。 僕はウサギくんと同じように街を見下ろした。 雨に音を吸い取られた街は、すごく頼りなくて、ひっそりとしていて、とても遠い場所にあるかのような錯覚に襲われた。 けれどその感覚が、僕は愛おしかった。 ウサギくん、綺麗だね。 僕は彼に聞こえるぎりぎりの声量でいった。 もちろんさ。 さも当然のように彼は答えた。 帰りたくなくなっちゃうくらい、綺麗だ。 僕はまた言った。
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