二人だけのお茶会

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 森の中を行くと小高い丘があって、その上に一本の大きな木がある。おっきな木で、その下に行くと横になっても隠れるほどの影が出来て、ゆっくりのんびり出来る。ちょっと家から遠いのが難点だけど、ここからの風景は見応えがあるものだと思う。 私はその木の下に着くと、この景色がもっとよく見える木の上にいて、本を読んでいるかぼーっとしているだろう彼の名前を呼ぶ。 「クェンティス君!おはよう」  返事はない。これはぼーっとしていて聞こえてないんだな。  そう考えると大きく息を吸い、もう一度彼の名前を呼ぶ。今度は聞こえたのか、少し間を置いて返事が返ってきた。 「あぁ、君ですか。おはようございます、スピカ。どうしたんですか?」 「新作ケーキの試食してもらおうと思って。それからまたクェンティス君から何か面白い話を聞かせて貰えたらなぁって」  バスケットを少し掲げて笑って見せると、分かりましたとクェンティス君も笑って答える。それから少し考えると、木から身軽に飛び降りて地面に舞い降りた。 「いま、何考えてたの?」 「木をつたって降りるのと、飛び降りるの、どっちが早いかなぁと思いまして。でも飛び降りるのは早いけど、ちょっと足が痛いですね」  マイペースな彼の考えに微笑んで、次は木をつたって比べてみたらと言うと、そうだねとまた笑って答える。  最初は彼のマイペースな思考についていけないこともしばしばあったけれど、今は逆にどんなことを考えているのか興味がある。誰も思いつかない彼の世界観が時折垣間見れるから。 .
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