二人だけのお茶会

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「今回の新作はなんですか?」  そう聞かれ、バスケットの中からケーキを取り出して見せる。薄いピンクと果実の赤が印象的な新作ケーキを取り出して、ホールのままクェンティス君に渡すと彼はフォークで一口サイズに切って口元に運んだ。  少し味わう素振りをみせるとごくんと飲み込み、美味しいですねと笑う。 「今回もダメだったかぁ」 「何でですか?美味しいのにダメなんですか?」  フォークをくわえたまま、不思議そうに首をかしげるクェンティス君。私は逆にあなたが不思議よ。 「今回は気付け薬に使われるマリクの実を使って、色合いはきれいだけど、食べると物凄く苦味があるケーキ作ったっていうのに、クェンティス君は美味しいって言うんだもの」  美味しいって言って貰えるのは嬉しいけど、たまには困った顔もみたいのに。悪戯をここまで無効にされると試行錯誤しながらも成功させたくなるのよ。まして、今も「美味しいものは美味しいんだから仕方ないですよ」なんて笑われたらね。  この味覚は竜人の血からくるのかしら。  ため息を一つついてみる。  次はもう少しマリクの量を多くしてみよう。  ちょっと危ない考えを頭に浮かべながらバスケットからアップルパイを取り出す。クェンティス君に渡したケーキが私に食べられるはずないと作った張本人が分からないことはない。私も食べれるようにアップルパイも用意してた。試作ならぬ悪戯ケーキを頬張るクェンティスのお詫びも兼ねて、半分はクェンティス君への口直しとして。  つまりは、鉄の胃袋に敬意を示して、なんてね。 .
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