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コンコン。
ノックの音。そして、
「・・・博士。」
声が聞こえた。若い男の、しかし高めの声だった。
「丈ですか。どうかしましたか?」
博士は、丈という名の青年のほうを向いた。丈はドアの近くにぽつんとつっ立っていた。
「あの・・・研究、進みませんね。」
丈はうつむき加減に言った。そして、しばしの沈黙。聞こえるのは、波の音だけ。やけに大きく聞こえる。
博士が口を開いた。
「あぁ、そのことなら気にしなくてもいいですよ。私はもう、諦めることにしました。」
あっさり返した。丈は、
「え・・・」と困惑している。そして、
「どうして?レポートを非公開にしてまで横取りされたくなかった『あれら』を、ほったらかしにするのですか!?どうして・・・どうしてそんなことが言えるのですか!そんなこと、博士が許しても、僕は許しません!」
とことん博士を責めた。
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