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「ところで……どうしてうちの事務所になんか来たんだ?
他に依頼するところはいくらでもあるだろ」
俺はF50のギアを2速から3速に入れながら尋ねた。
その時、横を一台の車が通り過ぎていった。
先程の窓の清掃会社の車だ。自社へ帰るには遠回りのはずなんだが
……どうでも良いことか💨
俺は彼女の回答を待った。
まぁまともな答えを期待しちゃいないんだが……
『うちの社長がそちらの局長さんと仲良しなんです。それで相談に乗ってもらいました』
「中々頭がいいじゃないか」
『えっ?』
いきなりの言葉に少し困惑したようだ。
「警察なんかより、俺たちの方が頼りがいがあるってことですよ」
いささか警察に対して皮肉を織り交ぜながら言ってみた。
『頼もしいですね』
―――以外とうけたようだ。
「ははは」
軽く笑い返したが俺は何となくこの依頼に抵抗があった。
―――なぜこうなったのかは今から1時間前に遡る。
《BY THE WAY》
「こいつは高速ライフル弾の薬莢だ。部屋に穴か何か空いてませんでしたか?」
俺はカートリッジに目をやった。
1発だけだったということから、彼女の車が駐車場に停めてあることを確認してから部屋に向かって撃ち込んだと推測した方がいい。
―――直接確認してみないとわからないんだが……
『もし宜しければ、私の家を調べてもらえませんか?
そういった類の話はわからないもので…』
まぁ無理もないか、女からすれば"恐怖"に違いないからな。
『どうしてこんな目に……』
泣きそうな声で彼女は言った。
これじゃ依頼引き受けを渋ってる俺が悪いみたいだな。
―――マケマシタ。
「依頼を引き受けますよ。今から家を調べに行きましょうか」
―――俺が"負けた"瞬間だった。
(続く)
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